雨の日に、財布を落として人生も落とした話

雨が強かった。
駅前のアスファルトが光ってて、靴の裏がずっと滑る。

亮はコンビニを出て、ポケットを探った。

ない。

財布がない。


中に入ってたのは
現金3,000円ちょっと。
キャッシュカード。
保険証。

でも一番重かったのは

「明日の家賃の金」。

頭が一瞬で真っ白になった。


交番で届けを出して、
ベンチに座った。

スマホの残高アプリを開く。

口座残高、1,218円。

笑うしかなかった。


その夜、帰り道で考えた。

俺、何年も
「なんとかなる」だけで生きてきたなって。

貯金もない。
スキルもない。
逃げ道もない。

なのに、今日まで来れただけ。


次の日。

亮はバイトの休憩室で、
スマホを見ながら求人サイトを開いた。

でも、指が止まった。

また同じ生活に戻るだけやん。

そう思った。


代わりに開いたのは、
無料の動画編集アプリ。

理由は単純。

「時間だけはあるな」って気づいたから。


最初に作った動画は、
自分のバイト先のメニュー紹介。

ダサい。
文字ズレてる。
音も変。

それでも投稿した。


1週間後。

「この動画、いくらで作れますか?」

知らん番号からのDM。

心臓がドンって鳴った。


その月、亮は
財布を落とした日より
ちょっとだけマシな生活をしてた。


今でも雨の日になると、
あの夜を思い出す。

でも、
もう下は見ない。